労働条件の明示がSNS等でもできるようになりました

 

平成31年4月1日より、これまで書面の交付に限られていた労働契約締結時の労働条件の明示が、労働者が希望した場合には、SNS等でもできるようになりました。
ただ、SNSメッセージ機能の本文で、キンコン!「契約期間は…」、キンコン!「就業場所は…」、キンコン!「始業時刻は…」など、労働条件を細切れに明示するのは望ましくないとか…
今回は、労働条件の明示をSNS等により行う場合の条件・方法と、労働条件の明示が必要な事項を掘り下げます。

 

FAX・メール・SNS等でも明示が可能に

労働契約締結時の労働条件の明示は、これまで書面の交付に限られていましたが、平成31年4月1日施行の改正労働基準法施行規則により、SNS等により行うことも可能となりました。
原則が書面の交付であることは変わりませんが、今後、労働者が希望した場合は、SNS等での明示が認められます。
具体的な方法として、厚生労働省のリーフレットには、以下の方法が挙げられています。

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➀FAX

②Eメールや、Yahoo!メール、Gmail等のWebメールサービス

③LINEやメッセンジャー等のSNSメッセージ機能 等

(注)第三者に閲覧させることを目的としている労働者のブログや個人のホームページへの書き込みによる明示は認められません。

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また、印刷や保存がしやすいよう、添付ファイルで送ることが推奨されており、SNS本文に直接記載し、労働条件を細切れに明示するのは、印刷する際に途切れてしまうため、望ましくないそうです。言った言わないを防ぐためには、労働者がSNS等による明示を希望したこと、本当に到達したかなど、確認・記録することも重要です。

 

労働条件の明示が必要な事項

この機会に労働条件の明示が必要な事項についても確認しておきましょう。
労働条件の明示が必要な事項には、特に重要な「書面による」明示が必要な事項と、それに次ぐ「口頭でもよい」事項があります。以下、具体的な項目を見ていきましょう。

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【書面による】

a労働契約の期間

b期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準

c就業の場所・従事すべき業務

d始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交代制に関する事項

e賃金の決定・計算・支払の方法、賃金の締切・支払の時期

f退職に関する事項(解雇の事由を含む)

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【口頭でもよい】

g昇給に関する事項

h退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定・計算・支払の方法、支払の時期

i臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)、賞与等、最低賃金額

j労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項

k安全衛生、職業訓練、災害補償・業務外の傷病扶助、表彰・制裁、休職に関する事項

※h~kは制度として定めている場合に明示が必要となります。上記にかかわらず、パートタイム労働者は、「昇給の有無」、「退職手当の有無」、「賞与の有無」は書面等で明示する必要があります。

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明示が必要な事項は数多くありますが、厚生労働省のモデル労働条件通知書(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/)などを活用し、漏れなく明示するようにしましょう。弊所でも労働条件通知書の作成・確認を承っておりますのでご相談ください。
ちなみに、これらの明示が必要な事項は、就業規則の絶対的必要記載事項(必ず記載しなければならない事項)、相対的必要記載事項(当該事業場で定めをする場合には記載しなければならない事項)と共通する部分も多く、労働条件通知書の代わりに、適用される部分を明らかにして就業規則を交付することでも足りるとされています。

 

何事も始めが肝心

今回の改正で入社時の労働条件の通知方法が従来に比べ柔軟となり、入社の際のコミュニケーションが取りやすくなったと言えるでしょう。
入社したばかりの従業員は、「あれって説明されてないけど、どうなってるのかな…」と思っても何となく聞きづらく、もやっとしたまま仕事をしているなんてことも、よくある話です。始めが肝心。労働条件はきちんと明示し、スッキリと仕事に臨んでもらいましょう。